ときは移って現在、「ひやおろし」は、春先に一度だけ加熱殺菌し、秋まで熟成させて、出荷前の2度目の火入れをせずに出荷されます。貯蔵の形こそ、タンクや瓶に変わりましたが、その本質は昔と変わりません。
暑い夏の間をひんやりとした蔵で眠ってすごして熟成を深め、秋の到来とともに目覚める「ひやおろし」。豊穣の秋にふさわしい、穏やかで落ち着いた香り、滑らかな口あたり、濃密なとろみが魅力のお酒です。
「ひやおろし」とは、江戸の昔、冬にしぼられた新酒が劣化しないよう春先に火入れ(加熱殺菌)した上で大桶に貯蔵し、ひと夏を超して外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになった頃、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま、大桶から樽に「卸(おろ)して」出荷したことからこう呼ばれ、秋の酒として珍重されてきました。
◆時は移って現在、「ひやおろし」は、春先に一度だけ加熱殺菌し、秋まで熟成させて、出荷前の2度目の火入れをせずに出荷されます。貯蔵の形こそ、タンクや瓶に変わりましたが、その本質は昔と変わりません。
暑い夏の間をひんやりとした蔵で眠ってすごして熟成を深め、秋の到来とともに目覚める「ひやおろし」。豊穣の秋にふさわしい、穏やかで落ち着いた香り、滑らかな口あたり、濃密なとろみが魅力のお酒です。
"綿屋のこだわり" 尽きない銘水を得て『綿屋』は磨かれる
酒造りにとって、水は命のようなもの。名水が湧く地には、おのずと酒造りが根付きます。
社名である「金の井酒造」は、創業当時の地名が「金田村」であったこと、そして金田村の水が素晴らしかったことから名付けられました。
ところが1998年、『綿屋』の命ともいえるその水脈が、下水整備の影響で途絶えてしまいます。蔵としての存続がかかった、とても大きな事件でした。水脈の枯渇の影響を受けたのは、金の井酒造だけではなく、集落全体の水道水にも影響を与えていました。そこで、この一大事を解決するために導き出されたのが、新たに『小僧山水』を集落の水道水として供給するという案でした。
『小僧山水』は蔵からほど近い深山から昏々と湧き出ている銘水であり、酒の仕込みが本格化する極寒の頃には、みそぎの神事が行われる霊験あらたかな水脈であります。
金の井酒造は、当初から『小僧山水』に着目し、汲み取り、仕込みの要所で活用してきました。それが、この機会を境に、洗米の段階はもちろん、すべての工程において、『小僧山水』をふんだんに使えるようになり、新たな『綿屋』の命となったのです。